会議室から大きな声が聞こえてきた。同僚が人前で何度も責められていた。その場では何もできず、あとから胸のあたりが重くなる。目撃した側にも、そういう夜があります。

この記事の要点

  • 目撃した側は当事者ではありませんが、あとから「その場にいましたか」と聞かれることがあります。
  • 日時・場所・聞こえた言葉・その場にいた人・自分の位置を、推測と分けてその日のうちに残します。
  • 本人に断りなく録音や共有をしない、SNSに書かない、相手を問い詰めない、を線引きにします。
  • 見ていた自分の負担も記録してよく、自分のこととして相談先に話すこともできます。
目次(8項目)
  1. 結論:見聞きしたことだけを、その日のうちに書き留める
  2. 残す項目と、推測の分け方
  3. しないでおきたいこと
  4. 本人に伝えるなら、短く
  5. 相談窓口に協力するとき
  6. 見ていた自分の負担も、残してよい
  7. きろくねで残すなら
  8. よくある質問

この記事は、職場で同僚へのパワハラと思える場面を見てしまった人が、自分の立場で残せる記録と、踏み込みすぎないための線引きをまとめたものです。受けた側から見た記録の残し方はパワハラを見ていた人がいるときにあります。

結論:見聞きしたことだけを、その日のうちに書き留める

目撃した人にできることは、大きな行動でなくても構いません。いつ、どこで、何が見えて、何が聞こえたかを、その日のうちに自分のメモに残しておく。それだけで、あとで本人や相談窓口から「見ていましたか」と聞かれたとき、記憶だけに頼らずに答えられます。

厚生労働省の「あかるい職場応援団」は、外部の相談窓口へ行くときに整理しておくとよいこととして、日時・場所・言われたこと・誰に言われたかと並べて、「そのとき、誰がみていたか」を挙げています。見ていた人がいたことは、相談の場で経緯を確かめる手がかりの一つになります。

パワハラは上司からのものに限らず、同僚や部下からの集団による行為なども含まれうるとされています。ただ、それに当たるかどうかは、原則として相談先や専門家が個別の事情をもとに判断します。目撃した人が決める必要はありません。

残す項目と、推測の分け方

  • 日時:分かれば時刻も。あいまいなら「午後、15時ごろ」と幅を持たせます。
  • 場所:会議室、フロア、オンライン会議など。
  • 聞こえた言葉:要約せず、聞こえたままに。一部しか聞こえなかったら「前後は聞こえなかった」と書きます。
  • その場にいた人:分かる範囲で。聞こえていたか分からない人は、そう分けます。
  • 自分の位置:どこにいて、何が見えたか、何が見えなかったか。
  • そのあと:本人の様子、自分がしたこと・しなかったこと。

気をつけたいのは、見たことと推測したことを混ぜないことです。「同僚が席を立って部屋を出ていった」は見たこと。「たぶん毎日言われている」は推測です。推測を書くなら、行を分けて「推測」と添えます。

架空の記入例

編集部が作った架空の例です。実在の出来事ではありません。

見聞きしたこと

推測・分からないこと

10月8日 16時ごろ、第2会議室の前の席にいた

会議室の中に何人いたかは見えなかった

「何回言えば分かるんだ」「もう来なくていい」という声が聞こえた

声は課長のものだと思うが、姿は見ていない

20分ほどして同僚が出てきて、そのまま席を外した

中で何を言われたかの全体は分からない

しないでおきたいこと

  • 本人に断りなく録音したり、見聞きしたことを広めたりしない:どうしたいかを決めるのは本人です。
  • SNSに書かない:名前を伏せたつもりでも、職場の人には誰のことか伝わることがあります。
  • 相手を問い詰めない:その場で割って入るか、あとで誰かに伝えるかは、自分の安全と立場を考えて選んでよいことです。目撃した人が一人で解決する必要はありません。

書き留めたものを誰かに見せるときの考え方は、相談先に見せる前の共有範囲の考え方も参考になります。

本人に伝えるなら、短く

本人に何か言いたくなったら、「あの日のこと、見ていた。日時とか、書き留めてある」とだけ伝える方法があります。協力の約束や、相談を勧める言葉を重ねる必要はありません。話したくなったときに材料があると分かっていれば、それで十分なこともあります。受けた本人がその日にできることはパワハラを受けた直後にできることにまとめています。

相談窓口に協力するとき

本人が社内の窓口に相談し、会社が事実関係を確かめる中で、話を聞かれることがあります。そのときは、メモを見ながら、見聞きしたことと推測を分けて話します。覚えていないことは「覚えていない」と答えて構いません。メモそのものを渡すかどうかは、自分で決めてよいことです。

労働施策総合推進法では、会社が相談に対応する中で、協力した労働者が事実を述べたことを理由に、解雇その他不利益な取扱いをしてはならないと定められています(厚生労働省のパンフレットに条文があります)。それでも不安が残るときは、自分自身のこととして社内外の窓口に相談できます。

見ていた自分の負担も、残してよい

目撃した場面が頭から離れない、職場に行くのが重くなった。そうした自分の変化も、同じメモの気持ちの欄に書いて構いません。見ていた側がつらくなるのは、おかしなことではありません。眠れない日が続くなど負担が大きいときは、自分のこととして相談先を頼ってください。

きろくねで残すなら

きろくねのメモには「何があったか(そのままの言葉で)」と「そのときの気持ち」の欄があり、出来事が起きた日時をあとから整えられます。ケースを選ばずに保存しても、日時付きの「未整理」として残ります。記録は端末の中に保存され、Face ID やパスコードでロックできます。無料でケースを一つ作れ、記録の数に上限はありません。

iPhone版きろくねで、見たことを書き留めておく

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。

よくある質問

パワハラを目撃したら、会社に通報したほうがいいですか?

通報するかどうかは、目撃した人が選んでよいことです。先に日時と見聞きしたことを書き留めておけば、あとで本人や相談窓口に話すことになっても、落ち着いて伝えられます。自分がどう動けばよいか迷うこと自体も、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーに相談できます。

見ていたことを話してほしいと頼まれたら、どうすればいいですか?

メモを見ながら、見聞きしたことと推測を分けて話します。覚えていないことは「覚えていない」と答えて構いません。メモそのものを渡すかどうかは、自分で決められます。引き受けるか迷うときは、その気持ちも伝えてよいことです。

目撃した場面を録音しておいたほうがいいですか?

目撃した立場では、まず日時と見聞きしたことをメモに残す方法から始めるのがおすすめです。録音を考えるときは、会社のルールや地域のルールを確かめ、本人の意向も尊重してください。録音したものを本人の了解なく人に渡すことは控えます。

見ていただけなのに、自分もつらくなってしまいました。

おかしなことではありません。自分の変化も、日付と一緒にメモに残して構いません。負担が続くときは、目撃したことを含めて、自分のこととして相談先に話せます。

出典・参考

廊下の先の扉から床に光が差し込む様子を、人の肩越しに見た構図

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。