カスハラ(カスタマーハラスメント)の記録シートは、1件ごとに「日時・場所」「対応した人」「相手の要望」「相手の言動」「自分の対応」「報告と指示」「結果」「自分への影響」を分けて書くと、上司や社内の相談窓口に経緯を説明しやすくなります。この記事では、厚生労働省の指針と企業向けマニュアルで確かめた項目をもとに、そのまま写して使える表と架空の記入例、同じ相手が続くときの経過一覧を紹介します。勤務先に報告書の書式がある場合は、そちらを優先してください。
この記事の要点
- カスハラの記録シートは、1件ごとに「日時・場所」「対応した人」「相手の要望」「相手の言動」「自分の対応」「報告と指示」「結果」「自分への影響」を分けて書くと、経緯を説明しやすくなります。
- 2026年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、相談窓口の整備や事実関係の確認などのカスハラ対策が事業主の義務になりました。
- 厚生労働省のマニュアルは、現場で対応した人が事実関係をできるだけ時系列で整理して報告することが望まれるとしています。
- 同じ相手から連絡や来店が続くときは、1件1枚のシートとは別に、日付順の経過一覧を作ります。
- 勤務先に報告書の書式があればそれを優先し、顧客の個人情報や会社の録音は自分の控えに持ち出しません。
目次(8項目)
結論:1件1枚のシートと、日付順の経過一覧を分けて作る
記録は二種類に分けると続けやすくなります。一つは、出来事1件ごとに詳しく書く記録シート。もう一つは、同じ相手から電話や来店が続くときに、日付順に一行ずつ並べる経過一覧です。シートは出来事の中身を、一覧は「何回、どのくらいの間隔で続いているか」を見返すために使います。
2026年10月1日から会社に求められることと、記録の関係
改正労働施策総合推進法により、2026年10月1日から、カスハラを防ぐための雇用管理上の措置が事業主の義務になりました。厚生労働省のリーフレットでは、方針の明確化と周知、相談窓口をあらかじめ定めて周知すること、事実関係の迅速かつ正確な確認、被害を受けた人への配慮、再発防止、相談した人のプライバシーの保護、相談したことなどを理由に不利益な取扱いをされない旨の周知などが挙げられています。
指針では、事実関係の確認の例として、相談窓口の担当者などが相談者から事実関係を確かめ、必要に応じて周りの労働者からも話を聴いたり、録音・録画などを確かめたりすることが示されています。再発防止では、必要に応じて事案の内容や対応経緯を記録し、関係部門に共有することも考えられるとされています。厚生労働省の企業向けマニュアル(令和8年度改訂版)は、現場で対応した人が、要望だけでなく事実関係をできるだけ時系列で整理して報告することが望まれるとし、本社・本部へ共有する内容の例として、対応日時・場所、対応した従業員、顧客等からの要望の内容、現場監督者の指示、対応結果などを挙げています。
働く人が手元で書くシートは、こうした報告や相談の場で、順番を思い出しながら話すための材料になります。
記録シートの項目と記入例(1件1枚)
次の表は、紙やメモアプリにそのまま写して使える項目です。記入例はすべて架空で、実在の店舗・人物とは関係ありません。
項目 | 書くこと | 記入例(架空) |
|---|---|---|
記録番号・記入日時 | 通し番号と、このシートを書いた日時 | K-03/10月3日 21時に記入 |
日時と所要時間 | 始まりと終わり。分からなければ「ごろ」 | 10月3日(土)14時05分ごろ〜14時50分、約45分 |
場所・手段 | 店頭、電話、メール、SNSなど | 店舗のレジ前。途中から事務所前の通路 |
相手を示す目印 | 氏名や住所は書き写さず、社内で使う番号など | 問い合わせの受付番号(番号は社内システムで確認) |
対応した人 | 自分と、同席・交代した人 | 自分(レジ担当)。14時20分から店長が同席 |
相手の要望 | 何を求められたか | 購入品の返金と、担当者の謝罪文 |
相手の言動 | 覚えている言葉はそのまま。不明な部分は「正確な文言は不明」 | 「誠意を見せろ」と繰り返した(10回ほど。回数は目安)。カウンターを2回叩いた |
自分の対応 | 何を説明し、どこまで応じたか | 返金の決まりを説明。謝罪文は店長に確認すると伝えた |
報告と指示 | 誰に、いつ伝え、何と指示されたか | 14時15分、内線で店長に報告。「一人で対応しないで」と指示があった |
結果 | どう終わったか、続きがあるか | 店長が引き継ぎ、14時50分に退店。「明日また電話する」と言われた |
周りの人・会社の記録 | 近くにいた同僚、会社の録音やカメラの有無(自分では持ち出さない) | 同僚Bが近くにいた。店内カメラあり(確認は店長に依頼) |
自分への影響 | その後の業務や体調 | 休憩後も手が震えた。17時に早退を相談した |
表計算ソフトで使う場合は、次の見出し行を1行目に貼り付けると、項目をそのまま列にできます。
記録番号,記入日時,日時,所要時間,場所・手段,相手を示す目印,対応した人,相手の要望,相手の言動,自分の対応,報告と指示,結果,周りの人・会社の記録,自分への影響
同じ相手が続くときの経過一覧
電話や来店が何度も続くときは、シートとは別に、日付順の一覧を作ります。1行に1件だけ書き、詳しい中身はシートの記録番号で参照します。次の例も架空です。
日付 | 手段 | 要点 | 報告・対応 |
|---|---|---|---|
9月27日(日) | 電話 | 配送の遅れについて約30分。担当者の名前を繰り返し聞かれた(K-01) | 主任に報告。折り返しは主任が担当 |
9月29日(火) | メール | 同じ内容で3通。「謝罪文を出せ」とあった(K-02) | メールは会社の窓口アドレスに残したまま、店長に共有 |
10月3日(土) | 来店 | 返金と謝罪文を求められた。約45分(K-03) | 店長が同席し、引き継いだ |
10月4日(日) | 電話 | 前日の続き。約20分(K-04) | 店長が対応。自分は対応していない |
一覧にすると、回数や間隔、誰が対応したかを一目で見返せます。どこからがカスハラに当たるかを、自分で一覧から決める必要はありません。厚生労働省のリーフレットでは、言動が社会通念上許容される範囲を超えるかどうかは、言動の目的や経緯、態様・頻度・継続性などを総合的に考慮することが適当とされています。判断は会社や相談先が個別の事情をもとに行います。
書くときの注意
- その場では書かない。対応中はメモより安全と報告を優先し、休憩や終業のあとに書きます。記入日時を残しておけば、あとから書いたものと分かります。
- 推測で埋めない。時刻は「ごろ」、言葉は「正確な文言は不明」と書き、相手の意図や「カスハラだ」という評価は書きません。
- 顧客の個人情報を書き写さない。氏名・電話番号・住所は自分の控えに書かず、受付番号などの目印にとどめます。目印を控えてよいかも、勤務先のルールで確かめます。
- 会社の録音や映像は持ち出さない。指針は、録音・録画にあたって個人情報保護法などを守り、顧客等の個人情報を適切に扱うことを求めています。確かめてほしいときは、日時と記録番号を伝えて上司や相談窓口に頼みます。
- 会社の書式とそろえる。報告書の書式がある職場では、そちらに写しやすいよう、シートの項目名を合わせておくと手間が減ります。
義務化の中身と働く側の記録の全体像はカスハラ対策の義務化はいつから?、記録を残すまでの一つの経過はカスタマーハラスメントを記録に残すまでにまとめています。社内に相談したあとの残し方は社内に相談した後の記録を参考にしてください。
社内で相談しにくいとき
社内の窓口に話しにくいときや、対応してもらえないときは、各都道府県労働局や全国の労働基準監督署内などにある総合労働相談コーナーで、ハラスメントを含む労働問題を無料・予約不要で相談できます。記録シートは、その場で話す順番を思い出すための手元の資料として使えます。
きろくねで残すなら
きろくねでは、メモ・録音・写真を一つのケースに時系列で並べられます。メモは「いつのこと」で出来事の日時を選べるので、終業後に書いた分も、対応した時刻に置けます。「何があったか」と「そのときの気持ち」を分けて書く欄があり、シートの「相手の言動」と「自分への影響」を分けて残せます。無料でケースを一つ作れ、記録の数に上限はありません。
記録は端末の中に保存され、アプリ独自のクラウド同期はありません。iPhoneのバックアップ(iCloud・パソコン)を有効にしていれば、記録もバックアップに含まれます。
きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。
よくある質問
- カスハラの記録シートに決まった様式はありますか?
厚生労働省の企業向けマニュアルには、本社・本部へ共有する内容の例として、対応日時・場所、対応した従業員、顧客等からの要望の内容、現場監督者の指示、対応結果などが挙がっています。勤務先に報告書の書式があればそれに合わせ、なければこの記事の表のように、手元で書きやすい形で構いません。
- 記録は紙の用紙とスマートフォンのどちらがいいですか?
続けやすい方で構いません。紙なら記入日時を毎回書き、スマートフォンなら会社の端末と私物の端末のどちらに置くかを勤務先のルールで確かめます。どちらの場合も、顧客の氏名や連絡先は書き写さないようにします。
- 何回続いたらカスハラと認められますか?
この記事で確かめた厚生労働省の資料には、回数で決まる基準は示されていません。リーフレットでは、言動が社会通念上許容される範囲を超えるかどうかは、言動の目的や経緯、態様・頻度・継続性などを総合的に考慮することが適当とされています。経過一覧で回数や間隔を見返せるようにしておき、判断は会社や相談先に委ねます。
- 会社の録音や防犯カメラの映像を、自分のスマートフォンにコピーしてもいいですか?
会社が管理している録音や映像は、自分の判断で持ち出さないでください。指針では、録音・録画にあたって個人情報保護法などを守り、顧客等の個人情報を適切に扱うことが求められています。確かめてほしいときは、日時と記録番号を伝えて、上司や相談窓口に頼めます。
出典・参考
- 厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)(2026-10-06 確認)
- 厚生労働省 リーフレット(詳細版)「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」(2026-10-27 確認)
- 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」(25・31ページ)(2026-10-06 確認)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026-10-06 確認)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026-10-06 確認)
きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。