パワハラの証拠がないと感じていても、社内の相談窓口や総合労働相談コーナーへの相談は始められます。厚生労働省の「あかるい職場応援団」では、社内の窓口に相談すると、担当者がまず相談者から事実関係を聴き取り、本人の同意を得たうえで行為者や第三者に話を聴く、という一般的な流れが案内されています。流れの最初にあるのは、資料の提出ではなく聴き取りです。

この記事の要点

  • 証拠がそろうまで相談を待つ必要はありません。厚生労働省の案内では、相談窓口はまず相談者から事実関係を聴き取り、本人の同意を得たうえで行為者や第三者に話を聴くとされています。
  • パワハラ防止の指針には、主張が食い違って事実の確認が十分にできないときに、第三者からも事実関係を聴取することなどが示されています。
  • 録音やメールがなくても、自分の記憶、職場や自分の変化、誰かに話した日などは、今から書き残せます。
  • これから同じことが起きたときは、いつ・どこで・誰が・何を・どのようにを短く残し、書いた日時も添えます。
  • 相談では「資料はほとんどない」とそのまま伝え、何が分かると確認しやすいかを尋ねられます。
目次(8項目)
  1. 結論:証拠がそろうまで、相談を待たなくてよい
  2. 相談窓口では、聴き取りから始まる
  3. 「ない」と思っていても、手元にあるもの
  4. これから起きたときに、短く残す
  5. 相談で「資料がない」と伝える言い方
  6. 一人で集めようとしなくていい
  7. きろくねで残すなら
  8. よくある質問

この記事では、職場のいじめを含め「証拠がない」と感じているときに、相談の場で何が起きるのか、すでに手元にあるもの、これから残せること、資料がないことの伝え方を整理します。録音の扱いはパワハラの録音の扱いと、原本・メモの残し方、録音以外の資料の並べ方は録音以外に残せる資料の整理にまとめています。

結論:証拠がそろうまで、相談を待たなくてよい

ここでいう「証拠がない」は、録音やメールのように、言葉がそのまま残ったものが手元にない状態を指します。相談の場は、起きたことを自分の言葉で伝え、窓口がどう確かめていくのかを聞くところから始まります。ある事実がどう扱われるかは窓口や手続によって異なり、この記事で結論は出せません。それでも、資料がそろうのを待ってから相談する必要はありません。

相談窓口では、聴き取りから始まる

あかるい職場応援団の「よくある質問」では、社内の相談窓口や人事部に相談した場合の一般的な流れとして、次の順番が示されています。

  1. 担当者が、相談者から事実関係を聴き取る。
  2. 本人の同意を得たうえで、行為者や第三者に話を聴く。
  3. ハラスメントに相当する事実があると判断されれば、行為者への懲戒処分、配置転換、謝罪などが行われることがある。
  4. 相当する事実がないと判断された場合でも、訴えのあった問題の解消に向けた話し合いが行われる。

事業主向けのパワハラ防止の指針でも、事実関係の確認の例として、相談者と行為者の双方から事実関係を確かめ、主張が食い違って事実の確認が十分にできないと認められるときは、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずることが示されています。確認が困難な場合などには、調停の申請など、中立な第三者機関に紛争処理を委ねることも例に挙がっています。言い分が食い違う場面は、制度の側でも想定されています。

「ない」と思っていても、手元にあるもの

言葉が残った資料がなくても、次のようなことは今からでも書き残せます。どれも、それだけで何かが決まるものではありませんが、相談の場で経過を説明する手がかりになります。

手元にあるもの

例

残し方

自分の記憶

会議のあとに言われた言葉、そのときの場所や周りにいた人

覚えている言葉はそのまま書き、曖昧な部分は「正確な文言は不明」とする

職場の変化

担当から外れた、会議の案内が来なくなった、席が移った

変化があった日と、誰からどう伝えられたか。伝えられなかったなら、そのことも書く

自分の変化

眠れない、出勤前に体調を崩す、受診した、休んだ

日付と内容。受診や休みの記録が別にあれば、その置き場所も書く

誰かに話したこと

家族や友人に打ち明けた、同僚に様子を聞かれた

話した日と相手、話した内容の要点。相手の言葉を推測で足さない

周りで見ていた人がいたことも、自分のメモに事実として残せます。その人に今すぐ協力を頼む必要はありません(パワハラを見ていた人がいるとき)。何か月も前のことを今から書く場合は、出来事の日と書いた日を分けて残します(パワハラのメモは後からでも書ける?)。

これから起きたときに、短く残す

あかるい職場応援団は、ハラスメントと思われる行為をされた場合に、いつ・どこで・誰が・何を・何のために・どのように(5W1H)したのかを記録するよう勧め、後々の事実確認などで有効だとして、メモや録音など最適な方法で記録を残すことを勧めています。その日のうちに詳しく書けないときは、次の三行だけでも構いません。以下は架空の例です。

  • いつ・どこで:10月2日(金)18時ごろ、課の打ち合わせのあと、会議室で
  • 何があったか:課長から「こんなこともできないなら来なくていい」と言われた。同じ部屋に係長がいた
  • そのあと:返事ができなかった。帰りの電車で書いた(10月2日 19時30分に記入)

翌日以降に書く場合は、書いた日時を添えます。業務チャットやメールで連絡が来た日は、その連絡の日時もメモに並べておくと、あとで原本と照らし合わせやすくなります。

相談で「資料がない」と伝える言い方

資料がないことは、隠さずに最初に伝えて構いません。次は話し始めの架空の例です。

「職場の上司の言動について相談したいです。録音やメールはほとんどありません。覚えていることを日付順にメモしてきました。どんなことが分かると確認しやすいか、教えてもらえますか。会社に知られることには不安があります。」

総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせ、パワハラを含むあらゆる分野の労働問題を対象に、予約不要・無料で、面談または電話で相談を受けています。都道府県労働局長による助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんの対象にも、いじめ・嫌がらせなどの職場環境に関する紛争が含まれます。ただし同じ案内では、ほかの法律に紛争解決の援助制度がある紛争は対象外とされています。パワハラについては、労働施策総合推進法にもとづく都道府県労働局長の助言・指導や調停の制度があり、雇用環境・均等部(室)や総合労働相談コーナーが相談先として案内されています。どの制度に当たるかは、相談の中で説明を受けられます。相談先の違いは総合労働相談コーナーにパワハラを相談すると?にまとめています。

一人で集めようとしなくていい

  • 参加していない会話をのぞく、他人のアカウントを使う、業務資料を広く持ち出す、といった方法は使いません。
  • 同僚に、記憶をそろえるよう頼むことは避けます。記憶が違っていても、二つのまま残します。
  • 集めること自体がつらいときや、身の安全に不安があるときは、記録より受診・休養・相談を先にしてください。

きろくねで残すなら

きろくねでは、メモ・録音・写真を一つのケースに時系列で並べられます。メモは「いつのこと」で出来事の日時を選べ、記録の詳細では「出来事の日時」と「記録した日時」を別に確認できます。「何があったか」と「そのときの気持ち」を分けて書く欄があるので、事実と気持ちを混ぜずに残せます。

記録は端末の中に保存され、アプリ独自のクラウド同期はありません。iPhoneのバックアップ(iCloud・パソコン)を有効にしていれば、記録もバックアップに含まれます。開くときにFace ID/パスコードで確認する設定もできます。

iPhone版きろくねで、今日の出来事を一件残す

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。

よくある質問

証拠がないと、パワハラとして扱ってもらえませんか?

どう扱われるかは窓口や事情によって異なり、この記事では判断できません。厚生労働省の案内では、相談窓口は相談者から事実関係を聴き取り、本人の同意を得て行為者や第三者に話を聴くとされ、指針には事実の確認が十分にできないときの手順も示されています。資料がないことも含めて、そのまま伝えてください。

職場のいじめでも、証拠がなくて相談できますか?

相談できます。総合労働相談コーナーは、いじめ・嫌がらせ、パワハラを含むあらゆる分野の労働問題を対象としています。分かる範囲で、日時・場所・言動・相手・見ていた人を整理して伝えると、話を進めやすくなります。

今から書くメモに意味はありますか?

あかるい職場応援団は、5W1Hを記録することについて「後々の事実確認などで有効」と案内しています。今から書く場合は、出来事の日と書いた日を分け、覚えていない部分を推測で埋めないようにします。メモがどう評価されるかは、相談先や手続によって異なります。

同僚に証言を頼んだほうがいいですか?

今すぐ頼む必要はありません。指針では、主張が食い違って確認が十分にできないときに、会社が第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずることが示されています。同席者がいたことは自分のメモに残し、頼むかどうかは相談先と一緒に考えられます。

出典・参考

短い行を書きはじめたノートとペン

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。