内閣府の令和5(2023)年度調査では、配偶者から暴力の被害を受けた回答者の44.2%が、どこにも相談していませんでした。これは全国の全世代についてDV被害者を数えた数字でも、モラハラだけの未相談率でもありません。調査の範囲を確かめると、「相談件数には現れない人もいる」という点を、数字を広げすぎずに理解できます。

この記事の要点

  • 44.2%は、令和5年度調査の配偶者からの被害経験者462人を分母とする割合です
  • 相談窓口の件数や、モラハラだけの未相談率とは異なります
  • 記録がなくても相談でき、危険があるときは記録より安全を優先します
目次(6項目)
  1. 44.2%は誰を分母にした数字?
  2. モラハラ全体や、窓口に来なかった人数には換算できない
  3. 相談するか迷うとき、先に決めなくてよいこと
  4. 書ける状況なら、一場面だけ残す
  5. きろくねでは、相談前の短いメモとして
  6. よくある質問

この数字を見て、相談できない自分を責める必要はありません。今まさに危険がある場合は、読むことや記録よりも安全確保を優先し、緊急時は110番へ。端末を見られるおそれがあるときは、その端末で無理に記録や検索を続けないでください。

44.2%は誰を分母にした数字?

内閣府「男女間における暴力に関する調査」概要版によると、調査は2023年11〜12月に実施され、対象は全国の18歳以上59歳以下の男女5,000人、有効回答は2,950人でした。そのうち配偶者からの被害経験がある462人について、相談経験を集計しています。

  • 全体462人:相談しなかった44.2%、相談した52.8%、無回答3.0%。
  • 女性289人:相談しなかった36.3%。
  • 男性173人:相談しなかった57.2%。

女性・男性の割合は、それぞれの被害経験者が分母です。全回答者2,950人の44.2%という意味ではありません。また、相談した人の割合を100%から引くだけでは、無回答まで未相談として扱ってしまいます。記事やSNSで数字を見るときは、分母と無回答の扱いを一緒に確認すると読み違いを減らせます。

調査票の問8は、これまでの被害について、だれかに打ち明けたり相談したりしたかを複数回答で尋ねています。選択肢には専門窓口だけでなく、家族・親戚や友人・知人も含まれます。「公的窓口へ相談していない」と「誰にも相談していない」は異なり、相談先ごとの割合を足して人数を数えることもできません。

モラハラ全体や、窓口に来なかった人数には換算できない

この調査の配偶者からの被害は、身体的暴行、心理的攻撃、経済的圧迫、性的強要について尋ねています。44.2%を「モラハラを受けた人の未相談率」と書き換えると、対象とする行為が変わります。交際相手からの被害の設問も別であり、配偶者の数字と混ぜてはいけません。

また、相談窓口の年間受付件数は、このアンケートの未相談割合とは別の情報です。受付件数には集計方法があり、同じ人の複数回の相談が含まれることもあります。窓口件数を44.2%で割ったり、全国人口に掛けたりして、隠れた被害者数を推計することはできません。

前回までの調査対象は20歳以上、今回の対象は18〜59歳と異なります。過去の割合と単純に比較して、相談しやすくなった・しにくくなったと断定するのも避けたい読み方です。この数字は特定の調査に答えた人の状況を表すものとして使います。

相談するか迷うとき、先に決めなくてよいこと

相談するときに、DVだと自分で認定しておく必要はありません。別れるか、相手に何を求めるか、どの制度を利用するかを、最初からすべて決めて話す必要もありません。「家でこんなことがあり、怖い」「電話を見られるので連絡方法に困っている」と、いまの困りごとから伝える方法があります。

公的な相談の案内は、内閣府のDV相談ナビで確認できます。#8008は近くの配偶者暴力相談支援センターにつながり、受付は各機関の相談時間内、通話料がかかります。つながらない回線もあるため、公式ページの窓口一覧も選択肢です。DV相談+では電話のほかチャット相談等も案内されています。

書ける状況なら、一場面だけ残す

次は編集部が作成した架空のメモです。相談に必要な公的書式ではなく、話し始めるための例です。全項目を埋める必要はありません。

出来事:9月8日の夜、自宅で外出予定を伝えたあと、大きな声で責められた。細かい言葉は思い出せない。
自分の行動:説明をやめ、その日は外出しなかった。
生活への影響:翌朝も外出の話をするのが怖かった。
相談したいこと:相手に知られずに話せる方法を知りたい。
記入日:9月10日。出来事から2日後に書いた。

覚えていることと分からないことを分ければ、言葉を補ってもっともらしく作る必要はありません。「怖かった」は自分の体験として書けますが、「相手は私を支配しようとした」は相手の意図についての推測です。両方書くなら、事実の欄と気持ち・受け止めを分けておきます。

日時が曖昧なら「先週の平日、夕食後ごろ」でかまいません。後から日付が分かったときは、分かった理由と追記日を添えます。書くことでつらさが増すなら中断してよく、録音を取り直すために同じ話を相手へ持ちかける必要もありません。

きろくねでは、相談前の短いメモとして

自分の端末を使える状況なら、きろくねのメモに「いつ・どこで・あったこと・今困ること」を短く残せます。ケースにまとめると、相談前に日時の順で見返せます。上の項目は本文へ自分で書く例で、専用の相談フォームではありません。アプリのロックがあっても、端末を見られる状況の安全を保証するものではありません。

まず一場面を書く考え方は3行だけの記録、端末を共有している場合の確認は共有端末で記録するときの注意も参考になります。記録を用意できたかどうかで、助けを求めてよいかが決まるわけではありません。

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。

よくある質問

44.2%は日本のDV被害者全員の割合ですか?

いいえ。令和5年度調査の配偶者から被害を受けた回答者462人を分母とする結果です。調査対象は全国の18〜59歳で、全年齢やモラハラだけの割合には読み替えられません。

記録がないと相談できませんか?

記録がそろうまで待たなくてかまいません。いま困っていることや、連絡方法の不安から伝える方法があります。

パートナーに端末を見られます。メモを残すべきですか?

記録より安全を優先してください。その端末での利用を無理に続けず、利用できる連絡手段や相談場所について支援窓口へ相談する選択肢があります。

出典・参考

DVで誰にも相談していない人はどのくらい?|調査の44.2%を読むのイメージ

きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。