パワハラの相談先は、「相談して何を望むか」から選ぶと迷いにくくなります。職場の中で止めてほしいなら社内の相談窓口、社外で話を聞いてほしい・選択肢を知りたいなら総合労働相談コーナー、会社に相談しても対応してもらえないなら都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)、損害賠償など法的な見通しを知りたいなら法テラスや弁護士、会社と話し合う場がほしいなら労働組合、心身がつらいなら医療機関や「こころの耳」、という分け方です。この記事では、厚生労働省などの公式の案内で確かめた相談先の違いと選ぶ順番を、一枚の地図にまとめます。窓口ごとの詳しい使い方は、文中でリンクする個別の記事で説明しています。
この記事の要点
- パワハラの相談先は、職場で止めてほしい、社外で選択肢を知りたい、会社に働きかけてほしい、法的な見通しを知りたい、など「望むこと」から選べます。
- 迷ったときは、予約不要・無料でパワハラを含む労働問題を受け付ける総合労働相談コーナーから始められます。
- 会社に相談しても対応してもらえないときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で、労働局長による助言・指導や調停を求められます。
- 損害賠償などは法テラスや弁護士、会社との話し合いは労働組合、心身の不調は医療機関やこころの耳、退職後の給付はハローワークが担当です。
- いくつかの窓口を使うときは、相談した日・相手・伝えたこと・言われたことを日付順に残しておくと、経過を確かめやすくなります。
目次(8項目)
結論:先に「望むこと」を一行で書いておく
相談先を探す前に、いまいちばん望むことを一行で書きます。いくつあってもかまいません。
- 叱責や無視を止めてほしい、相手と席や担当を離してほしい
- 会社に知られずに、使える制度や選択肢を知りたい
- 会社が動かないので、外から働きかけてほしい
- 慰謝料や損害賠償を求められるかを知りたい
- 残業代や解雇のことも一緒に困っている
- 眠れない、出勤がつらい
- 辞めたあとの生活(失業給付)が心配
この一行があると、窓口で「どうしたいですか」と聞かれたときに答えやすくなり、窓口の側もどの制度を案内すればよいか判断しやすくなります。パワハラに当たるかどうかを、自分で決めてから相談する必要はありません。迷うときの見方はパワハラと厳しい指導の違いは?にまとめています。
相談先の全体図
主な相談先と、公式の案内で確かめた役割です。
相談先 | 主にできること | 向いているとき |
|---|---|---|
社内の相談窓口・人事 | 事実関係の確認、相談した人への配慮、行為者への措置、再発防止。窓口を決めて周知することは事業主の義務とされている | 職場の中で止めてほしい、配置や担当を見直してほしい |
総合労働相談コーナー | パワハラを含むあらゆる労働問題の相談。予約不要・無料で、面談か電話。助言・指導やあっせんの案内、労働基準監督署などへの取り次ぎ | まず社外で話を整理したい、どこに行けばよいか分からない |
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) | パワハラについての労働局長による助言・指導や、調停による紛争解決の援助 | 会社に相談しても対応してもらえない |
労働基準監督署 | 労働基準法などの違反の相談・申告、労災保険の給付 | 残業代の未払いや解雇、仕事が原因の心身の不調も一緒にある |
法テラス・弁護士 | 法テラスは、解決に役立つ法制度や相談窓口を無料で案内している。条件を満たせば弁護士・司法書士との無料法律相談もある | 慰謝料や損害賠償、法的な手続きを考えたい |
労働組合 | 厚生労働省の案内で、会社の相談窓口と並ぶ相談先として挙げられている | 会社と話し合う場がほしい、職場の仲間と一緒に動きたい |
こころの耳・医療機関 | 働く人のための電話・SNS・メール相談と、精神科・心療内科などの医療機関の検索 | 眠れない、食べられない、出勤がつらい |
みんなの人権110番 | 差別やハラスメントなど人権問題の電話相談。最寄りの法務局につながる | 人権の問題として話を聞いてほしい |
ハローワーク | 雇用保険の離職理由の判断。事業主と離職者それぞれが記載した理由と、裏付けとなる資料をもとに、公共職業安定所長が判断する | 退職を考えている、辞めたあとの給付が心配 |
望むことから選ぶ順番
- 身の安全と体調を先に。暴力を受けた、身の危険を感じるときは110番へ。眠れない・食べられない日が続くときは、医療機関や「こころの耳」の相談を先に使います。記録や手続きは、そのあとで構いません(パワハラで体調がつらいときの記録)。
- 迷ったら、総合労働相談コーナーから。あらゆる分野の労働問題を受け付け、法律違反の疑いがあれば労働基準監督署などに取り次ぎ、希望すればほかの紛争解決機関の情報も提供すると案内されています。会社への連絡や持ち物は総合労働相談コーナーにパワハラを相談すると?、電話での切り出し方は労働局にパワハラを相談するときにあります。
- 職場で止めてほしいなら、社内の相談窓口。厚生労働省は、会社の人事労務などの相談担当者や信頼できる上司に相談するよう案内しています。窓口があっても話しにくいときは受付前に確認したい5項目、相談した後の残し方は社内に相談した後の記録へ。
- 会社が動かないなら、雇用環境・均等部(室)。労働局長による助言・指導や、調停を求められます。労働施策総合推進法は、援助を求めたことや調停を申請したことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁じています(第36条・第37条)。
- 残業代・解雇・労災が絡むなら、労働基準監督署も。役割の違いは労働基準監督署にパワハラは相談できる?で整理しています。
- 損害賠償や法的な手続きを考えるなら、法テラス・弁護士。法テラスの「よくある相談」は、会社の窓口で解決しないときに総合労働相談コーナーや弁護士などに相談することや、行為の内容によっては損害賠償を求めることが考えられるとしています。無料法律相談には、収入や資産が一定の基準以下であるなどの条件と審査があります。
- 会社と話し合う場がほしいなら、労働組合。職場に労働組合があるかは、就業規則や社内の案内で確かめられます。
- 辞めることを考えているなら、離職理由の判定の仕組みも知っておく。判定するのはハローワークで、会社や本人ではありません(パワハラで退職すると会社都合になる?)。
順番は目安で、一つに絞る必要はありません。総合労働相談コーナーで制度を聞いてから社内窓口に相談する、通院しながら記録を続ける、といった組み合わせもできます。
架空の例:相談先ごとのやり取りを記録する
いくつかの窓口を使うときは、どこに、何を伝え、何と言われたかを日付順に残しておくと、話が食い違ったときに確かめやすくなります。次は架空の例で、実在の人物・会社とは関係ありません。
日付 | 相談先 | 伝えたこと | 言われたこと・次にすること |
|---|---|---|---|
9月14日(月) | 自分のメモ | 望むこと「会議で人前で叱責されるのを止めてほしい」「先に会社の外で選択肢を知りたい」 | まず社外で聞いてみる |
9月16日(水) | 総合労働相談コーナー(電話) | 6月ごろから週2回ほど、会議で大声で叱責されること。社内窓口に話すのが不安なこと | 社内窓口に相談し、対応がなければ労働局の助言・指導や調停もあると説明を受けた。社内窓口に相談してみると決めた |
9月18日(金) | 社内の相談窓口(メール) | 代表的な出来事3件と、望むこと | 受付の返信あり。「9月25日(金)までに面談日を連絡する」とあった |
9月29日(火) | 社内の相談窓口(電話) | 面談日の連絡がまだ来ていないこと | 10月5日(月)に面談と決まった |
「言われたこと」は、窓口の説明をそのまま書き、自分の解釈は分けておきます。返事を待っている間の不安や体調も、別の行に残してかまいません。
どの窓口でも、最初に伝えるとよいこと
厚生労働省のポータルサイト「あかるい職場応援団」は、総合労働相談コーナーに相談するとき、ハラスメントだと感じたことが起こった日時、場所、言われたことや強要されたこと、相手、そのとき見ていた人を持っていくとよいとしています。これに次の三つを足しておくと、ほかの窓口でも話を進めやすくなります。
- 望むこと(上で書いた一行)
- 続いている期間とおよその回数、体調や仕事への影響
- 手元にある資料(メモ・メール・チャットなど)と、ないもの。会社に知られることなど、不安なこと
1枚にまとめる方法は相談で伝わる1ページまとめ、資料がそろっていないときはパワハラの証拠がないときはどうする?を参考にしてください。
公務員・派遣・フリーランスの場合
- 公務員:「あかるい職場応援団」の案内では、国家公務員や地方公務員(一部の職員を除く)の相談は、総合労働相談コーナーと都道府県労働委員会では扱っていないとされています。一般職の国家公務員は人事院の相談窓口か所属府省の人事担当部局、地方公務員は人事委員会(公平委員会)などの窓口、公立学校の教員は教育委員会の窓口が案内されています。
- 派遣社員:厚生労働省のリーフレットでは、派遣元だけでなく派遣先にもパワハラ防止の措置義務があるとされています。派遣元と派遣先のどちらの窓口に何を伝えるかを、先に分けて考えておくと相談しやすくなります。
- フリーランス:雇用ではないため、相談先と根拠が変わります。フリーランスのハラスメント相談窓口は?で扱っています。
きろくねで残すなら
きろくねでは、出来事のメモ、録音、写真を一つのケースに時系列で並べられます。メモは「いつのこと」で出来事の日時を選べ、「何があったか」と「そのときの気持ち」を分けて書けます。窓口に相談した日の記録も同じケースに並べておくと、出来事と相談の経過を一つの流れで見返せます。アカウントを作らずに使え、無料でケースを一つ作れて、記録の数に上限はありません。
記録は端末の中に保存され、アプリ独自のクラウド同期はありません。iPhoneのバックアップ(iCloud・パソコン)を有効にしていれば、記録もバックアップに含まれます。
きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。
よくある質問
- パワハラはどこに訴えればいいですか?
「訴える」で求めることによって窓口が変わります。会社の外から会社に働きかけてほしいなら、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)で労働局長による助言・指導や調停を求められます。損害賠償の請求など法的な手続きを考えるなら、法テラスや弁護士に相談します。どれに当たるか分からないときは、総合労働相談コーナーで相談すると、利用できる制度を案内してもらえます。
- 労働基準監督署に行けばいいですか?
厚生労働省の案内では、パワハラを含む労働問題の相談は、労働局や労働基準監督署の中などにある総合労働相談コーナーが受け付けています。労働基準法などの違反の疑いがある場合は、労働基準監督署などに取り次ぐとされています。残業代の未払いや労災のことが一緒にあるときは、そのことも伝えてください。
- 匿名で相談できますか?
厚生労働省のハラスメント対策のページでは、総合労働相談コーナーについて「匿名でも大丈夫/プライバシーは厳守します/相談は無料です」と案内されています。会社への働きかけを求める手続きに進むかどうかは、相談の中で確かめられます。
- いくつかの窓口に相談してもいいですか?
窓口ごとに役割が違うので、総合労働相談コーナーで制度を聞いてから社内窓口に相談する、体調のことは医療機関に相談する、といった使い分けができます。並行して相談するときは、どこに何を伝え、何と言われたかを日付つきで残しておくと、話が食い違ったときに確かめやすくなります。
- 公務員の場合はどこに相談しますか?
あかるい職場応援団の案内では、国家公務員や地方公務員(一部の職員を除く)の相談は総合労働相談コーナーでは扱っていません。一般職の国家公務員は人事院の相談窓口か所属府省の人事担当部局、地方公務員は人事委員会(公平委員会)などの窓口、公立学校の教員は教育委員会の窓口が案内されています。
出典・参考
- あかるい職場応援団(厚生労働省)「相談窓口のご案内」(2026-10-14 確認)
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(2026-10-14 確認)
- 厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」(2026-10-14 確認)
- 厚生労働省 リーフレット(詳細版)「2020年(令和2年)6月1日より、職場におけるハラスメント防止対策が強化されました!」(2026-10-14 確認)
- e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」(第36条・第37条)(2026-10-14 確認)
- 法テラス よくある相談「職場で、パワハラ(パワーハラスメント)を受けています。どうすればよいですか。」(2026-10-14 確認)
- 法テラス「無料法律相談・弁護士等費用の立替」(2026-10-14 確認)
- こころの耳(厚生労働省)「相談窓口案内」(2026-10-14 確認)
- 法務省「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」(2026-10-14 確認)
- ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」(2026-10-14 確認)
- ハローワークインターネットサービス「基本手当について」(離職理由の判断手続きの流れ)(2026-10-14 確認)
- 厚生労働省 リーフレット「労働基準監督署の役割」(2026-10-14 確認)
きろくねは記録を助ける道具です。診断・認定・法的な判断は行いません。危険やつらさが強いときは、公的な窓口や専門家への相談もご検討ください。